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佐藤紘一さん(小城市教育委員会)の佐賀セミナー参加記

平成24年8月17日(金)に佐賀市で開催した「つなぐ力: 公文書館機能普及セミナーin 佐賀」に参加した小城市教育委員会の佐藤さんにインタビュー形式の参加記をお寄せいただきました。

Q1 佐藤さんは学芸員でいらっしゃいますが、公文書館機能普及セミナーに参加された動機は何ですか。また、どのようなことを期待しましたか。

佐藤: 学芸員である前に一県民である事が、参加の動機としては大きかったと思います。県の公文書館設置については、どの様な「かたち」となるのか、これまでの経緯を含めて知りたいと思っていました。

もちろん学芸員(嘱託)としての動機はありました。現在携わっている移管された文書及び資料の目録作成作業における疑問を解決したい、という思いからです。勤務先の自治体は、平成16年度に旧4町による合併によって市制が施行されました。合併以前に町史編纂の為に収集された歴史資料と編纂に係る非現用の公文書が一群として混在した状態で移管されたのです。今までの歴史資料調査などの経験から目録項目を統一して作業を開始したのですが、非現用公文書には適さないものや不足している項目がある様に感じました。それぞれに分離採録しても良かったと考えますが、実際の作業では難しく頭を悩ます事になりました。

それから、歴史資料館での受入があくまで歴史資料としてのものである事から、公文書としてどの様に扱うかが問題でした。平成23年には<「公文書管理法」が施行されていましたから、収集した公文書に個別にアクセスできる様に工夫が必要ではと思っていました。資料館で所蔵する資料の目録は、閲覧等に供する体制が整っていなかったからです。
また、廃棄文書の廃棄・移管とその過程における市「文書取扱規程」との齟齬があるのではと言う疑問がありました。(セミナー後、市「実施要領」が改定されている事を知りました)

Q2 参加されたプログラムそれぞれについてうかがいます。まずは佐賀県公文書館見学会の感想を。

佐藤: 率直に、狭いと言う印象は拭えませんでした。「公文書館」の看板をかける前、つまり「歴史的文書閲覧室」時代には一度しか伺った事はないのですが、施設面では大きく変わりばえする事は有りませんでした。ただ、閲覧スペースが狭い分だけ職員の方との距離感も近い様に感じます。この点は、良い所ではないかと感じています。書庫環境は決して良好とは言えない様ですが、除湿機を設置したり、操作盤に誰もが操作が可能な様に表示している点はとても良いものだと思いました。

Q3 見学の後、佐賀県庁会議室に場所を移して、佐賀県職員と市町職員、そして全史料協会員による情報交換会を行いました。佐藤さんはそこで活発に発言されていましたね。

佐藤: 1に挙げた疑問を解決したい思いと、行政文書の保存(保管)環境について、またその方法について伺いたいとの考えでしたから、質問をさせて頂きました。文化課で受け入れる公文書などについては、明確なルールを整備する事が第一だと助言を頂きました。

次に保存環境の事では、ガス燻蒸をされていると耳にしていましたが、実際は炭酸ガスによる消毒だと言う事でした。佐賀城の堀や水路が近くに流れる立地環境の為、1階書庫は湿度が高くなるなど、日頃の温湿度管理の一端をご紹介頂きました。また、新井さん(埼玉県立文書館)からは、自館でのガス燻蒸(全館)を行わない取り組みについて話を頂きましたし、大変参考になりました。

佐賀県では、県立図書館内の郷土資料室が大変利用されています。県の広報などでは公文書館との併設化を含めた様々な「あり方」を検討していると目にしました。図書館と公文書館、そして関係部署との協議を行っていると伺いましたが、両施設の「現場」を知る職員は加わっていないとの事でしたので、今後は具体的に協議が進行する前に利用者のニーズを知る「現場」職員の声も反映して頂ける体制を整えてもらえれば、との思いが一県民としてあります。

また、車座式の会場で、私の様な者でも馴染みやすい環境を設定して下さり有り難く思いました。

Q4 午後のセミナーについて、印象に残った点をいくつか挙げていただけますか。

佐藤:早川講師の法文解釈についての講演内容は大変興味深く拝聴致しました。多くの県市で文書取扱規程の不備や課題を指摘されておられた点は、自身が勤めている自治体の規程を顧みる参考となるものでした。また、「廃棄→移管」でなく、「移管→廃棄or保存」の考え方も理解できました。
もちろん、佐賀県法務課の岸川副課長による公文書館設置に至るまでの経緯と行政サイドからの視座についての講演も、一般的な行政経験のない私にとっては貴重な内容であったと思っています。

Q5 お勤めになっている自治体における課題は何でしょう。

佐藤: 市として「公文書は市民との共有財産」であると謳っています。ファイリングシステムの導入で、現用文書については効率良く管理されています。「共有財産」と謳っているものの、多くの指摘がある様に、非現用文書については市から発信される情報は少ない様に感じています。現に、「廃棄→移管」と言う流れから文化課へ移された文書については、その存在は公になっているものもありますが、利用に供する為の目録が誰もが手に取り閲覧が可能な状態では公開されていません。また、市では近く庁舎の引越しが計画されており、公文書等の廃棄が無いか、大変気にかかる所です。
ファイリングシステムを導入されている自治体の事例を知る機会が改めてあれば、是非今回の様なセミナーなどにも参加したいと思います。

―ありがとうございました。

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